太公望〈上〉



太公望〈上〉
太公望〈上〉

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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流浪の太公望

愛読する作家、宮城谷氏の作品です。
今回描いている人物は太公望。本名は呂尚です。「太公の望んだ人物」
がその敬称の所以とも云われている。古代中華史において、これほど
重要な人物はいないにも限らず、文字が普及し始めたばかりの頃の人
物なので、伝説と史実の中で良く分からない人である。

この上巻では、望(太公望)の少年期に始まり、仲間と離散集合を繰
り返しながら、成長し妻帯者になるまでを描いている。

望は羌族の人だという。羌といえば、遊牧民族。当時の中国には羌族
が多かったようだ。いや、中国のほとんどの族が遊牧をしていたので
あろう。商(殷)だけが突出し農耕を行い、その余剰生産物で交易を
行い、商業を興こしたと考えたほうがよさそうな印象だ。

彼の人生はこの物語が始まった瞬間から商の受王への復讐を一貫した
志としている。

これは殺戮を志した人生を選択した事になる。自分自身も賊にたびた
び襲われ、死地を潜り抜けるのだが、賊が悪であるとするならば、自
分の大志も賊と変わらないというジレンマを望自身が感じている事に、
物語の深みを感じている。

中巻以降も楽しみです。
名セリフ満載の素晴らしい小説

千年に一人の天才軍師と言われる太公望だが、
太公望以前には兵法が存在しなくて、
神のお告げで動いていた軍隊を合理的な法で動かした、
兵法の創設者というのが正しい。
もっとも優れた兵法家は孫子だと思うが、
平和的中立主義を諌めて、民族を守る為には戦わなくてはいけない、
と主張する太公望の教えは孫子より右翼には受けると思う。
少年時代に商の受王に父を殺され、
商王朝打倒の怨みを抱いて成長した太公望は、
周公と太子発の人柄に触れて怨みは浄化され、
受王をぶち殺したいとは思わなくなったのだが、
厭戦思想を持つ自分の民族が商王朝に辺境に駆逐されていく、
現状は正さなければならないと、
周と召を操り、商王朝を打倒することになるのであるが、
悪の帝国の商を倒しても、商が作った素晴らしい文化
<文字>は消えることはないだろうと思うのは清清しかった。
敵にも学ぶことはあるという太公望の知識欲には萌え萌えでした。
倒すべきは悪しき風習であり、本当の敵なんていないのだ。
太公望に討伐された悪しき山賊が改心して、太公望の部下になるのだが、
知的に成長し続ける元山賊に太公望が舌を巻くシーンもあったりして、
環境が悪いと人は悪になるということがよく判って感動しました。
山に篭って剣術の修行をした太公望は、目にも止まらぬ早業で剣を使えるようになり、
下山しようと思ったのだが、師匠は文字を知っていたので、
ついでに文字も習い始めるのだが、
文字に興奮して文字にのめり込むシーンが、
ヘレン・ケラーの奇跡の人のラストシーンみたいに感動的である。
努力して文武両道の人になった太公望だが、
有能になって目立って、豪族に目を付けられて、
豪族の娘と結婚する破目になる。
家庭の幸福に溺れ、
世界平和の為に商王朝を倒すという野望を忘れかける太公望だが、
幸運なことに妻が病死してくれて、
天の意志を感じた太公望は策謀の場に帰ってくる。
不幸はより良い幸福の前兆だと考える、
太公望の前向きな考え方は生きる力を与えてくれます。

作者の考えが途中に入り読みにくい

望が成人になりかけのころに起こった
事件で・・・犯人はこの中にいる。
何でもできる人というのは、かっこい
いですね。

しかし、臭い。
なんだか、どこかの映画監督が脚本を
作って役者が脚本通りに演技している
ように思える。
(完璧すぎる人間です)
運命付けられたというか・・・なんと
いうか。
中巻と下巻に比べてそこまでおもしろ
いとは思わない。なので、星3つ。
太公望は英雄ではなく、本物の神であったのか??

本を読みなれていない人には、、、
日本史なら司馬遼太郎。
中国史なら宮城谷昌光と吉川英治、ともいえるべき、宮城谷昌光の中国史作品の傑作!!

なんといっても宮城谷著の本は読みやすくっておもしろい!
老若男女問わず、非常にテンポよくドキドキハラハラしながら楽しめる作品です。

さて、上記のタイトルについて。
自分は別に宗教を持っているわけでもなく、神の存在を信じる訳でもありませんが、この作品を読むと、そう思わずにはいられません。
それほどに太公望という人物のもつ不思議な魅力、人望、軍事的政治的才能には驚きの連続でした。
神の手をもってしか成せないのではないか??とも思える彼の戦略にはため息が出るほどに関心してしまいます。
また、彼の持つ人望。
確かにこの作品に書かれている太公望は、人物像という面で多少脚色されている部分があるにせよ(3千年も昔の人物ですから。)、これほどの大きな器を持った若き偉人に、読者は心を動かさざるを得ないでしょう。

この作品は、読者自身の現在の自己の生き方にさえ、疑問と葛藤を投げかけてくるような、恐ろしく、そして素晴らしい作品です。
宮城谷昌光の名言とも言えるような文章の連続に、きっと何かしら考える部分があることでしょう。
読者には歴史を知るとともに、上記の点をも考えつつ、読破していただきたいと思います。
歴史小説ファンだけでなく、ファンタジー、冒険小説のファンも必読!!

私は横山光輝のコミック「三国志」、「項羽と劉邦」「史記」、小説では陳舜臣の「小説十八史略」、安能務の「始皇帝」から、古代の英雄ものにハマりました。
まだこのジャンルは50作品くらいしか読んでいないので浅学ですが、今のところ鄭 飛石の「孫子の兵法」と、本作が最高に面白い作品だと思っています。


実はもともとエピック・ファンタジーが好きで、E.R. エディスンの「ウロボロス」や、デイヴィッド・エディングスの「ベルガリアード物語」、ワイス&ヒックマンの「ドラゴンランス戦記」などのタイプの作品が好きだったので、すんなり溶け込めました。
ですので、「指輪物語」のような大作ファンタジーが好きな方も、「歴史小説って退屈じゃない?」などと思わずに、ぜひこの「太公望」を読んでみてください。

これを読む前に太公望が仙人として大暴れする、明時代に書かれたとされるファンタジー、安能務の「封神演義」も読んでいたのでそっちも楽しめましたが、宮城谷 昌光の「太公望」は、それよりも遥かに、実に新鮮な面白さでした。

多くの古代英雄ドラマだと、たとえば鄭飛石の「孫子の兵法」の孫武などは、呉国にふらりとやってきて一気に頭角をあらわし、八面六臂の大活躍で常勝してまたふらりと消え去る・・・・といった映画のヒーローのような描かれ方をしていますが、孫武や韓信、呉子、諸葛孔明よりも偉大とされるヒーロー、太公望の、なんと地味で、苦しい戦い振り!

地下活動を続けながら、世界最大の帝国に立ち向かう、レジスタンスな太公望がいます。
そして、この太公望と、彼を取り巻く人々の人物像のすがすがしさは、どの登場人物も、悪役でさえも好きになれます。
太公望が剣術を伝授され、その師匠が謎に満ちた人物であるなど、まるで白土三平の初期のアクション時代劇マンガのようなノリもグッド。

絶望のどん底にいても、希望を捨てずにじわじわと力をつけ、はじめは復讐のための戦いが、やがては人々の為に立ち上がる太公望の姿は感動的です。

ココには釣りをしていて周王を待ち受ける老人の太公望もいなければ、最後に「覆水盆に帰らず」を彼を放り出した妻にしてみせる太公望もいません。
ちなみに世界最初の兵法書といわれていた「六韜」が、実は太公望の作ではないなど、実にさりげなく俗説の間違いを教えてくれるので、結構勉強にもなりました。



文藝春秋
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